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中小企業のサラリーマンが定年を目前にプチFIREしようという話。

『砂の器』を読んで考える原作と映像作品について

松本清張砂の器新潮文庫・上下巻)を読みました。
この作品は映画やTVドラマで、何度も映像化されているので、
ある程度知っていたつもりでしたが、
原作はTVドラマと全然違う!というのに驚きました。
そして原作本と映像化作品との関係について、考えてしまいました。

<目次>

 

e-honより


1、ドラマ化をきっかけに原作者が亡くなった件

少し前に、TVドラマ化されたコミックの原作者が亡くなるという件がありましたね。

通常メディア化というのは、原作者にも、出版社にとってもウハウハなはずです。
原作料というのは意外に少ないと聞きますが、原作本は増刷がかかり、
場合によってはキャラクターのライセンス料とか、副次的に増収に繋がるはずです。

しかしこの一件では、ドラマ作品の内容に不満な著者と、TV局との間に
行き違いがあったのか、双方にとって不幸な結果になりました。
私は原作コミックもドラマも両方未見なので、内容がどう改変されたのかとか、
そのあたりのことは知らないので、感想もありません。

ただ思うのは、コミックにはコミックの、小説には小説の、映像には映像の
表現があるんだろうな、ということです。
映像でも、映画とTVドラマでは、お金の掛け方、年齢制限の問題とかで
違ってくるでしょう。

でも原作者にとっては、我が子も同然の作品でしょうから、
許せない一線があったのかもしれません。


2、『シャイニング』『惑星ソラリス

スティーヴン・キング氏の小説『シャイニング』を、
2001年宇宙の旅の巨匠・スタンリー・キューブリック監督が映画化し
大ヒットしました。
ドアとドア枠の間に顔を挟んでジャック・ニコルソンごっこをしなかった人は
いないでしょう(言い過ぎですか)。
でもキング氏は、作品の出来におかんむりだったのは、有名な話です。

私の大好きな映画惑星ソラリスも、
原作者のスタニスワフ・レム氏からボロクソに言われています。
巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督は、
ガチSFの原作ソラリスの陽のもとに』の設定を借りて
テーマを別なところに置いてしまいました。
私は何度も見て傑作だと思うのですが、原作者はお気に召さなかったようです。


3、『砂の器』はどうなのか

野村芳太郎監督の映画版は、傑作と言われていますが未見です。

 

e-honより



私の観たのは、中居正広さんが主演のTVドラマ版で、2004年の放映です。
歌がお上手とは言いがたい中居さんが、天才ピアニストの役だったのは
ちょっと面白かったのですが、なんにせよドラマ版の主人公はこの音楽家です
(原作ではピアニストではなく前衛音楽家)。

でも小説版では、主人公は刑事なんです。
手弁当であちこち捜査をして、刑事が犯人に辿り着く軌跡を詳細に追ったもので、
犯人視点の描写はありません。
犯人がどんな半生を送り、殺人に手を染めることになるのかは、
刑事が調べた事実の羅列でしかありません。

「それこそがドラマになる」と考えた、映画製作サイドの気持ちはよく分かります。
WIKIによれば脚本の橋本忍氏が、清張氏より映画化を依頼されたものの、
その原作を不出来だ、つまらんと言っていたそうです。

原作では、犯人がガリレオ先生も真っつぁおになるような
実に面白いトリックを用いています。
それはミステリを書くルールノックスの十戒に抵触するようなトリックで、
この小説の瑕疵にもなっているように思えます。

もし目端のきく編集者がいて、巨匠の清張氏にもの申していたら、
どうなっていたでしょう。
「犯人は誰かとかに重きをおくのをやめて、刑事のパートを削り、
後半を犯人の幼少期から現在に、充ててはどうですか」と言っていたら。
きっとシャーロック・ホームズの長編みたいに
前半はミステリ、後半は大河小説っぽい感じになったでしょう。


4、タイトルの「砂の器」とは

かっこいいタイトルですが、どういう意味なのでしょう。

途中で自殺してしまう女性の手記に、
自分が恋人と満足な愛情を交わすことができない、
そのことを、手からこぼれ落ちる砂に例えています。

これをタイトルにしていると思われる割には、
この女性と恋人(音楽家)との関係を描いてはいません。
ここもドラマになりそうですが、小説では刑事視点なので、
女性の思いは手記の一部でしか分かりません。


ほかにも意味が込められていると思いますが
「いい感じのタイトル・ベスト10」には入りそうです。

ということで、私はこの原作本、小説としては大傑作になり損ねたけれども、
映像化の素材になりそうな要素を孕んだ作品、という感じでしたね。

(あくまで個人の感想です)

 

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